不動産、いつか来た道 マイナス金利で過熱

「不動産業では出せない値段だよ」

 不動産投資信託(REIT)、大和証券オフィス投資法人(証券コード8976)が運用会社を通じ、3月29日に東京・西新宿のオフィスビルを137億円で取得した取引が、マイナス金利政策の影響で資金が流れ込む不動産業界で注目されている。

JR新宿駅から徒歩4分の11階建て。「悪くない」(国内REIT幹部)物件だが、ある不動産関係者は「収益性を考えると120億円がいいところでは」と指摘する。

 不動産取引では、賃料など年間の収益額を取得価格で割った利回りが重視される。取得価格が高いと利回りは下がる。このビルでは3.4%と開示され、不動産シンクタンクの都市未来総合研究所のデータによると、上場REITが取得したオフィスビルでは過去最低だ。都心のオフィスビルは2014年ごろまで4%台が相場だったが、じわじわと低下している。

 なぜ「割高」でも買ったのか。強気の背景にはマイナス金利政策がある。10年物国債まで市場金利がマイナスに沈むなか、金融商品としての不動産の魅力は相対的に増している。さらに大和オフィスは「賃料が低いテナントに契約更改時に引き上げを求める」などして、利回りは4.1%に上がると見る。

 だが実需が気になる不動産業の視点からは、別の景色が見える。SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリストは「金融・商社系のREITと不動産系で明らかに物件取得の姿勢が違ってきた」と指摘する。

 東京建物(8804)系の日本プライムリアルティ投資法人(8955)、栄田聡取締役は「5~10年後の金利上昇を考えると、慎重にならざるを得ない」と話す。それに、利回りの前提になる賃料の動向は心もとない。東京都心部の大規模ビル賃料は2月まで2カ月連続で低下した。「賃料上昇局面が変化した可能性もある」(三幸エステートの今関豊和チーフアナリスト)。